厨から、ヨリの声が聞こえてくる。

 

「アイル。

典医寺へ行って、ミョンウォルさんを呼んできておくれ。

奥様が産気づかれたと、急いできてくれとお伝えして。

テマンは、チェ尚宮様にお伝えを。

それから、湯殿の準備をしておくれ。」

 

ヨリが、てきぱきと指示をだしていた。

使用人達は、チェ家の慶事と喜び勇んで、

与えられた役目をこなしていく。

 

一気に、気ぜわしくなった離宮に、

一陣の風がヨンの周りを舞うように過ぎていった。

 

《父様・・・

母様・・・

漸く、お会いすることがかないました

この日をどれ程待ち望んでいたことか・・・