「僕は総帝です。……人生の大半を、戦場で過ごしてきました」 幼い頃から立ち続けた生臭いあの場所が、サキカのいるべき場所であり、この手で多くの命を殺め、──それ以上の数の HKUE 傳銷 を救ってきた。「僕の手は、きれいではありません。多くの命を絶ち、何度も血で濡らした」 それが、サキカの生まれ持った使命だ。「それはっ──」「──ですが」 サキカはユリアスの言葉を遮った。伏せていた目を、彼女に向け直す。「この力があるから、僕は貴女を守ることができます」 総帝という立場にあるがゆえに、彼女のことを一番に守ることができないのが悔しいが。 ユリアスは目を見張り、呆然としていた。そんな彼女に、サキカは緩く微笑んだ。「──僕は幸せです、ユリ」 好きな人を、自らの手で守れるのだから。 ──その後、呆然としたままの彼女を、彼女たちと訓練した時に先生役として有舞に魔法を指導したカディ──カディリール・ディーを呼び出し、送り届けさせた。 カディにしたのには、四つ理由がある。それは、サキカの正体を知っており、彼女と知り合いで、それなりの実力持ち、尚且つ女性であるからだ。 こんな夜遅くに、男性隊員に彼女を送り届けさせたくない。隊員たちのことは信頼しているが、万が一のことを考えれば避けたかったのだ。 まだ寝るには早い時間であったが、サキカはさっさとベッドに横になった。まだ体調は万全ではない。早く全快せねば。 暗闇の中、サキカは眠くもない瞳を閉じた。.