──銀のマント。最高の防具でもあるそれを、片手で羽織る。サキカの魔力に反応して、留め金が勝手にかけられた。「久しぶりですね、ラフィア。さて、自己紹介でもしましょうか?」HKUE DSE「き、貴様……、何で」唖然としてこちらを凝視するラフィア。サキカは小さく笑う。侮らせて隙をつくのは失敗したが、意表をつかせることはできたようだ。「──ギルド“月の光”零番隊隊長“白銀の刀使い”サキカ。総帝、と呼ばれています」本名を告げたのは、顔が知られた時点で即名前まで調べあげられるとわかっているから。立ち尽くすラフィアに向けて、漆黒の刀と自らの身体を白銀に輝かせたサキカは、走った。──魔力も体力も、消耗してしまっている。戦いが長引けば長引くほど、サキカが不利になるであろう。それに、逃げられてしまう可能性もなくはないのだ。ガイアにですら目に映らないといわせた速度で、ラフィアに斬りかかる。しかし、流石は魔界四天王と呼ばれるだけはある。ラフィアは驚愕しつつも、身体をそらして避けたのだ。好機とばかりに下半身を薙ごうとすると、奴は転移魔法を使用し、サキカの視界から消え失せた。だが、そのようなものは、子供騙しにしかならない。サキカには通用するわけがない。逃げたのか、と思わなかったわけではない。しかし奴はこんなところで何もせずに逃げるほど臆病者ではないだろう。サキカが疲労している今、大怪我でも負わせてから、と考えるに違いない。.