突然誰かが入ってくる可能性が無くもないここでは、フードを外すことはできない。故に依頼を受けるときのいつもの総帝姿で、総帝――サキカは立っているのである。その左腕には、学園でHKUE 傳銷 DSEけている魔封具はない。ついていればむしろ訓練の邪魔になってしまう。久々に魔封具を外したせいで魔力が安定しなかった。今は一、二分ほどかけてゆっくりと魔力を宥め終えたところである。(さて、魔法の練習をしましょうか)全力で魔法を使うのも久々だ。しかし、それをする前に行わなければならないことがある。「天の光は我らを照らし、――」サキカは魔法を詠唱し始めた。――この魔法は、光属性の神級魔法であり、現存する魔法の中で最も高度で効果の高い結界魔法だ。神級魔法とはいえ、詠唱破棄ができないこともないのだが、詠唱破棄は効果が薄れてしまい、さらに魔力も余計に使うのだ。詠唱する時間がないほど急いでいるわけでもない。したがって、詠唱破棄をする必要があるわけでもなく、付け加え今から行うのは魔法の訓練だ。万が一壁に魔法が当たってしまった場合のことを考えると、もともと張られている結界では心もとなく、故に結界を張ろうとしているのだ。結界は丈夫なほど良い。「――天使の翼となりて包み込む。慈愛の女神は我に友を守る力を与え、悲しき戦を見守らん“女神の御加護”」長い詠唱の後、魔法は漸く発動する。淡い黄色の光が白い翼となって訓練場全体を包み込み、ドームのようなものを形成していく。翼は徐々に姿を消していき、残ったのは訓練所を包み込む淡い光のドームだ。――全ての魔法の中でもっとも美しいと言われているこの魔法は、神級魔法であるためサキカや光帝ぐらいしか使える者はおらず、目にしたことがある者は少ない。故に、幻の魔法とまで言われている魔法なのだ。.